主人公は画家。絵が重要な役割を果たす部分があり大変興味深い。ただ、本当に大事なのは彼が伝統的な英国文化の中で、いわば「ヒッピー」とか「アウトロー」とかと見なされるような外見と人生を送っていることだと感じた。そしてそのような生き方を貫いてきた彼の精神が、タイトルでもある「不屈」として、物語に描かれる事件でも大きな役割を果たすのだと思う。
ただ、彼が「私」として登場する一人称の文体で、彼の外見の違和感を感じることはあまりない。また彼が感じる肉体的な苦痛ですら、彼の「不屈」な精神のおかげであまり読んでいて感じ取れなかった。ときどきふっと出てくる描写に、あらためてどきっとするのは確かなのだが、あまりにもさりげなさすぎて、雑な読者である僕には、主人公の戦いを追体験することが上手にできなかった。初期のフランシス作品は、読んでいてずっしり疲れるほど、主人公の肉体的・精神的痛みを感じさせてくれたものだが。
物語の展開は面白いし、よくできていると思う。昔初めて読んだときには宝探し的な興味にばかり惹かれてしまったが、改めて読むと随分いろいろな情報を突っ込んであるし、登場人物も多彩で、みな魅力的だ。だから、敵に対してがっつりと反感を抱けるし、主人公をめぐる人間関係の変化についほろりとしてしまったりする。事件とその解決よりも、そういった人間ドラマの方が興味深かった。
ミステリとしては必ずしも最高の作品とは言えないと思うが、やっぱり素敵な読書体験に満足できた。
ただ、彼が「私」として登場する一人称の文体で、彼の外見の違和感を感じることはあまりない。また彼が感じる肉体的な苦痛ですら、彼の「不屈」な精神のおかげであまり読んでいて感じ取れなかった。ときどきふっと出てくる描写に、あらためてどきっとするのは確かなのだが、あまりにもさりげなさすぎて、雑な読者である僕には、主人公の戦いを追体験することが上手にできなかった。初期のフランシス作品は、読んでいてずっしり疲れるほど、主人公の肉体的・精神的痛みを感じさせてくれたものだが。
物語の展開は面白いし、よくできていると思う。昔初めて読んだときには宝探し的な興味にばかり惹かれてしまったが、改めて読むと随分いろいろな情報を突っ込んであるし、登場人物も多彩で、みな魅力的だ。だから、敵に対してがっつりと反感を抱けるし、主人公をめぐる人間関係の変化についほろりとしてしまったりする。事件とその解決よりも、そういった人間ドラマの方が興味深かった。
ミステリとしては必ずしも最高の作品とは言えないと思うが、やっぱり素敵な読書体験に満足できた。
2029-07-16
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Last-modified: 2020-07-06 (Mon) 18:38:56 (JST) (233d) by KAZU
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