NeverLand Musical Factory
SAKAI KAZUNARI
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 以前読んだ時にはあまり印象に残らなかった作品。読み返してみるとなかなかの傑作でびっくりした。初読時を思い出してみると,サバイバルの専門家である作家が主人公ということなので,バグリイの「原生林の追撃」とか,フランシスなら「本命」のような,マンハントから逃げ回るような派手な設定を期待していたから,肩すかしをくらったような気持ちになったのではないかと思う。大間違いである。

 主人公は作家である。今までパンフレットのようなものを書いていたので,小説家としては駆け出しで,極貧の生活をしている。ある人物の伝記を住み込みで書くことになるのだが,その人物の周辺で巻き起こる愛憎にあふれた人間模様と犯罪が,この物語の内容である。ずばりと犯罪が描かれていくまでに少し時間がかかるのだけど,そのぶん少しドロドロとした愛憎劇にたっぷりつきあうことができる。なかなか興味深い。

 主人公がサバイバルの専門家であり,実は優れた作家であることが,物語の中で大きな意味を持つ。作家であることは,観察力,洞察力,想像力を生かした「目」としての役目と係わるのだけど,優れた「目」でなければ,この物語が描き出す人間模様がくっきりと見えなかったに違いない。

 サバイバルの専門家であることは,この物語のアクション的な要素を大きく係わる。いくつかある「危機からの脱出」シーンは,かならずしもアクションとして派手ではないのだけれど,描写に優れていて胸が重くなる。最後の山場の盛り上がりに向けて,少しずつ流れをつくっていく様は,さすがに名人芸である。

 サバイバルは心の持ち方である。これが主人公の考え方のひとつである。それが大きく試されるのが最後の山場である。アクションとしてはやはり派手ではないのだけれど,じっくりと描かれている主人公の「闘い」は,中期フランシスの名シーンのひとつではないだろうか。「利腕」で明確になった「戦う相手は心の中にいる」というテーマの,設定におけるひとつの頂点なのではないかとさえ思う。

 ただ,物語として考えると,真相の後味の悪さが辛かった。さわやかな結末を望む方には,どうもお勧めできないなと思ってしまう。

2012-11-15



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Princeps date: 2012-11-15 (Thu) 20:32:59
Last-modified: 2012-11-15 (Thu) 20:32:59 (JST) (2824d) by KAZU
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