NeverLand Musical Factory
SAKAI KAZUNARI
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 ずいぶん久し振りに読んだけれど、思った以上に充実した傑作で実は驚いてしまった。初読の時にあまり印象に残らなかったのはなぜだろう。

 急死した兄の事業の整理(それだけではないのだけれど)を心ならずもすることになった騎手の物語である。騎手自身は仕事上の事故で足を骨折していて、それが物語としても大きな陰影を与える。行動上のハンディであったり肉体的な弱点になると同時に、精神的な面でも印象的である。

 多くの謎が主人公の騎手の前に立ちふさがる。知っているはずのものが急に死んだことで結果的に謎になってしまったこともあれば(今僕が急死したら例えば僕のPCの起動はできなくなる)、犯罪に関係した謎もある。そういう点では、多くの事件が平行して進行するタイプのミステリといえなくもない。

 人間というのは多かれ少なかれ謎をはらんでいる。騎手は次第に自分の兄の人間像を詳しく知っていくのだけど、その人間像がなかなか魅力的で、「もっと早くからたくさん知り合っておけばよかったのに、もう取り返しがつかない」と騎手が嘆くのが切ない。前半部分では特に、生と死についてさまざまなことが心に浮かんできて、作品としての深みを感じさせる。

 ミステリとしてはやや小品で、初期の作品の変奏曲のような印象を持った。しかし、この作品の持ち味は、犯罪がありその犯人を捜すということではなく、もっともっと普通小説に近いものだと思う。ただ、サスペンスはさすがで、手に汗を握るようにして読み進められる。主人公に与えられる肉体的な苦痛も、シリーズ中屈指かもしれない。彼が感じる恐怖も。

 ただ残念なのはタイトル。直訳の日本語タイトルだけど、この単語の意味を「直線」といってしまうのは間違いといってもいいくらいだと思う。この単語は主人公の形容として使われていて、「まとも」とかいうような意味合いに、かなり深いニュアンスを込めているのだと思う。もう少しうまい二字熟語がほしかったなぁと残念に思うのである。

2012-10-20



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Princeps date: 2012-10-20 (Sat) 09:07:58
Last-modified: 2012-10-20 (Sat) 09:07:58 (JST) (2647d) by KAZU
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