KAZU さんの日記
2019
1月
6
(日)
18:23
本文
「下町ロケット」を観ているとどんどん感情移入していってしまう。いろんなことが起こり、主人公側が追い込まれ、でも、全力の努力とまっすぐな精神力で、逆転をする物語。いろいろな要素を入れ込んであるけど、要するに昔ながらのスポ根ドラマである。今までにないタイプのキャラクターが出てきて興味深いなと思っていたら、結局彼も隠れ同じ穴の狢だった。うーん、がんばるためにはブラック企業にならないといけないのかな。
と、皮肉な目で見てみるとそういうことになるんだけど、最初に書いたように実に感情移入しながら楽しく観たし、思わず拍手をしたくなるようなことが何度もあった。なかなかややこしいの世の中で、正しいことや、一生懸命やったことが、すかっと報われないことが多いからこそ、せめてテレビの中くらい、すっきりとしたい気持ちがあるのかもしれない。何よりも、がんばることとか、信じることとか、そういうことのすごさを、ちゃんと大事にしたい自分の心が、大きな音を立てて共鳴しているのだと思う。
「リーガルV」も、正義は必ず勝つって感じで、危機一髪からの大逆転劇は、結局ぎりぎりになってすごい「証拠」がタイミング良く見つかる、というパターン化された展開もあって、ここまで徹底すると逆に楽しい。
主人公が医者だった時のシリーズとは一見匂いが似ているようで、大きく異なっていたのが興味深かった。一匹狼が自分の技術だけを頼りに乗り切っていくのが中心的な展開だった医者のものがたちに対して、今回はチームワークが前面に出ていたのがおもしろかった。個々の活躍を順に描いていき、最後のエピソードでみんなが主人公を救うのは、わかっていてもすっきりとした。欲を言えば、メンバーが集まるところをもっとゆっくり描いてほしかった気がした。
僕にとっては、この趣向の違いはとっても快いもので、このところ自分が感じていた思いと気持ちよく響き合った気がする。全体としてのわかりやすさも、すごく気持ちが良かった。やっぱり複雑なものを、大切な1本の筋で切り開いていくすがすがしさが、「下町ロケット」と共通していたと思う。
そういう意味で、すっきりしそうですっきりしなかったのが「西郷どん」だった。歴史上の事実としての西南戦争はどうしたって換えられないのだから、吉之助という人物を正義の味方として描こうとすれば、そこをどう解釈するかが問われることになる。佃社長のようなわけにはいかないのである。吉之助を一貫した人物として描こうとするあまり、周辺の人物に対する視線がやや残念だったような気がしなくもない。確かに慶喜だって矛盾に満ちた人物だったと思うけれど、西郷隆盛だって、そういった矛盾をはらんだ人物だからこそ、逆に僕には魅力的に思えるのだ。
ただ、全部観てみた後で振り返ると、不自然なほどの聖人を全部「西郷どん」に背負わせた分だけ、他の人たちが魅力的に描き出せていたような気がする。大久保利通ももちろんだけど、龍馬も、桂も、勝も、将軍も、大名も、国父も、みんな矛盾をはらみながら精一杯生きていた人物として印象的だった。吉之助とその一派、吉之助を愛した女性たちだけが、ちょっと書き割り風に見えて仕方がなかった。フィクションと違って、もともと複雑な社会の中で複雑に生きていた人たちを、「下町ロケット」や「リーガルV」の登場人物と同じように描き出そうとすれば、やっぱり無理があったのだと思う。
興味深い時代の物語だし、描き方が興味深かったので最後までしっかり観たのだけど。
結局、1年間を通してちゃんと観たと言えるドラマはこの3本くらい。あとは「義母と娘のブルース」だけど、まあこれは別のタイプの感想を持ったので、触れないことにしよう。
と、皮肉な目で見てみるとそういうことになるんだけど、最初に書いたように実に感情移入しながら楽しく観たし、思わず拍手をしたくなるようなことが何度もあった。なかなかややこしいの世の中で、正しいことや、一生懸命やったことが、すかっと報われないことが多いからこそ、せめてテレビの中くらい、すっきりとしたい気持ちがあるのかもしれない。何よりも、がんばることとか、信じることとか、そういうことのすごさを、ちゃんと大事にしたい自分の心が、大きな音を立てて共鳴しているのだと思う。
「リーガルV」も、正義は必ず勝つって感じで、危機一髪からの大逆転劇は、結局ぎりぎりになってすごい「証拠」がタイミング良く見つかる、というパターン化された展開もあって、ここまで徹底すると逆に楽しい。
主人公が医者だった時のシリーズとは一見匂いが似ているようで、大きく異なっていたのが興味深かった。一匹狼が自分の技術だけを頼りに乗り切っていくのが中心的な展開だった医者のものがたちに対して、今回はチームワークが前面に出ていたのがおもしろかった。個々の活躍を順に描いていき、最後のエピソードでみんなが主人公を救うのは、わかっていてもすっきりとした。欲を言えば、メンバーが集まるところをもっとゆっくり描いてほしかった気がした。
僕にとっては、この趣向の違いはとっても快いもので、このところ自分が感じていた思いと気持ちよく響き合った気がする。全体としてのわかりやすさも、すごく気持ちが良かった。やっぱり複雑なものを、大切な1本の筋で切り開いていくすがすがしさが、「下町ロケット」と共通していたと思う。
そういう意味で、すっきりしそうですっきりしなかったのが「西郷どん」だった。歴史上の事実としての西南戦争はどうしたって換えられないのだから、吉之助という人物を正義の味方として描こうとすれば、そこをどう解釈するかが問われることになる。佃社長のようなわけにはいかないのである。吉之助を一貫した人物として描こうとするあまり、周辺の人物に対する視線がやや残念だったような気がしなくもない。確かに慶喜だって矛盾に満ちた人物だったと思うけれど、西郷隆盛だって、そういった矛盾をはらんだ人物だからこそ、逆に僕には魅力的に思えるのだ。
ただ、全部観てみた後で振り返ると、不自然なほどの聖人を全部「西郷どん」に背負わせた分だけ、他の人たちが魅力的に描き出せていたような気がする。大久保利通ももちろんだけど、龍馬も、桂も、勝も、将軍も、大名も、国父も、みんな矛盾をはらみながら精一杯生きていた人物として印象的だった。吉之助とその一派、吉之助を愛した女性たちだけが、ちょっと書き割り風に見えて仕方がなかった。フィクションと違って、もともと複雑な社会の中で複雑に生きていた人たちを、「下町ロケット」や「リーガルV」の登場人物と同じように描き出そうとすれば、やっぱり無理があったのだと思う。
興味深い時代の物語だし、描き方が興味深かったので最後までしっかり観たのだけど。
結局、1年間を通してちゃんと観たと言えるドラマはこの3本くらい。あとは「義母と娘のブルース」だけど、まあこれは別のタイプの感想を持ったので、触れないことにしよう。
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