KAZU さんの日記
2018
8月
9
(木)
22:40
本文
昔読んだ時にはもう一つぴんとこなかった作品だが、改めて読んでみると面白く読むことができた。こっちが少し歳をとって、主人公に感情移入できるようになったからだろう。子沢山のヒーローというのは珍しいが、その趣向が生きていると思う。ある意味主人公を縛る枷ではあるのだが、それ以上に勇気を与えてくれる存在。子供を語るならそのものズバリだ。とてもよくわかる。子供の存在以上に、妻の存在も気になる。この辺りの機微も、今読み返すと実に丁寧に、安易な解決を求めず書き込んであるのがいい。
ミステリとして読めば、それほど見るべきものがあるようには思わない。閉鎖的な人間関係の中に意に染まず放り込まれた主人公の奮闘記は、随分な災難だと実感として感じられる。犯人がどうしたというよりも、トラブルに巻き込まれた男が、それに耐え、やがて逆襲に転じる物語だと思えば気持ちがいい。歪んだ精神を持つ敵役は、フランシス作品ではおなじみだが、この作品では比較的地味な描き方をされていて、それが逆にリアルで妙に怖い。僕らの生活の中にもこういう人物は潜んでいて、まるで地雷を踏んだ時のように、一気に災厄を連れてくるんだなと、自分の周囲を見回したくなる。じわりじわりと忍び寄ってくる悪意が、最後にドンと爆発するあたりは、中盤のスペクタルな山場に勝るとも劣らない迫力で迫ってくる。
全体として重厚な雰囲気で、映画にするといい感じになるだろうなと思う。他の作品に比べて特に傑作というわけではないとは思うが、ハラハラしながらじっくりと読み進めたい本である。
ミステリとして読めば、それほど見るべきものがあるようには思わない。閉鎖的な人間関係の中に意に染まず放り込まれた主人公の奮闘記は、随分な災難だと実感として感じられる。犯人がどうしたというよりも、トラブルに巻き込まれた男が、それに耐え、やがて逆襲に転じる物語だと思えば気持ちがいい。歪んだ精神を持つ敵役は、フランシス作品ではおなじみだが、この作品では比較的地味な描き方をされていて、それが逆にリアルで妙に怖い。僕らの生活の中にもこういう人物は潜んでいて、まるで地雷を踏んだ時のように、一気に災厄を連れてくるんだなと、自分の周囲を見回したくなる。じわりじわりと忍び寄ってくる悪意が、最後にドンと爆発するあたりは、中盤のスペクタルな山場に勝るとも劣らない迫力で迫ってくる。
全体として重厚な雰囲気で、映画にするといい感じになるだろうなと思う。他の作品に比べて特に傑作というわけではないとは思うが、ハラハラしながらじっくりと読み進めたい本である。
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