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with BACCHUS - 台本の深み

台本の深み

カテゴリ : 
芝居作りのノウハウ » 台本を読む
執筆 : 
KAZU 2021-4-29 8:43
 昨日、「台本の深み」みたいな話をした。台本の読み方という観点で考えてみたい。

 AがBに「大嫌いだよ」と叫ぶシーンがあったとする。素直に読めばAはBが嫌いなんだろう。だけど、ずっと先の方のページに「あの時はあんなこと言ったけど、本当は好きだったんだ」という台詞があったら役者は考えなければいけない。どんな可能性があるだろう。

1 あの時、Bを好きな気持ちを隠して「大嫌いだ」と言った。
2 あの時、Bを好きなことに自分で気づいておらず、後で自分の本心に気がついた。
 どこかに「僕はあの時も君が好きだと自覚していたけど、こういう理由であんなことを言ってしまったんだ」というような台詞があれば1に決まるけど、そんなことまで説明している台本はあんまりいい作品ではないことが多い。むしろ、まったく違う台詞とかト書きに書かれたちょっとした行動の中にそっと正解を匂わせていたりする。その匂いに気がつくかどうかは、国語力か感性かをどれだけ鍛えてきているかで決まる。もちろん、「なぜ」本心と別なことを言ったのかも探らなくちゃいけない。その答えが台詞やト書きの中に明確に書いてあることもあれば、匂いだけ漂っていることもある。匂いさえなくて、自分ででっち上げざるを得ないこともある。

 もちろん、2の可能性もある。もしそうなら、いつ、何がきっかけで本心に気づいたのかつかんでおきたい。Bが舞台にいる時にその変化があればいいが、登場していない時にそれがあったらやっかいだ。作者の頭の中には正解があるのかも知れないが、その正解を作者が書いてくれているかどうかはわからない。書いていなければ、手がかりを探して推理したり想像したりするしかない。そもそも「あの時はあんなこと言ったけど〜」なんて親切に書いていなくて、「おはよう」くらいでその代用をしている台本の方が多いし、まったく何も書いていないけど物語がそれを前提に進む台本もある。そのほうがだいたい面白い。

 もちろん1か2か判断した後で、それをどう表現するかという役者特有の課題がある。国語の授業と違って、分析結果を発表するわけにはいかない。台本に書かれた台詞に従い、自分の身体と声を使って、観客に伝えなければならない。この話はまたべつに書く。

 基本的には作者が書いたことを手がかりにして、書いていないことを探るのが台本を読むということである。そして、書いてあることの奥にどれだけ書いていないことがあるか、そしてその書いていないことが作品の魅力にどれだけ係わっているか、みたいなことが「台本の深み」である。書いてあることが全部事実で、書いてある情報しか表現されなければ、それは芝居ではない。音楽を例に挙げれば「静かな音楽が流れる」という情報だけでは演劇にはならない。その「静かな音楽」が具体的にどんな音楽なのか、どのくらいの音量なのか等を誰かが決めて、誰かがスイッチを押しフェーダーをあげなければ芝居にはならない。

 役者も同じである。書かれている台詞やト書きの奥を探る。同じ「おはよう」でも100とおりの表現の仕方がある。単なる4文字の言葉の奥にどんな感情や意思や思いがこめられているかを台本から探り、自分の個性と(台本から読み取った)登場人物全体像と相談しながらどう表現するかを考え、日ごろ鍛えた身体と声でその表現を現実にものにしていくのが客車の仕事である。良い台本ほど、書いてあることの裏に豊かな宝物が隠れているはずだ。「限界のある今の自分の理性と感性レベルで読んでわかったと思ったこと」ことを「限界のある今の自分の能力でやりやすいように、きもちいいように」やるだけでは、あまりにももったいないのが演劇というものだと僕は思う。
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高校演劇部の顧問として、部員に向けて書いた「演劇部便り」です。演劇づくりに関するマニュアル的なものから組織作りのようなこと、個人的な想いを書いたものまで内容はさまざまです。一応ジャンル分けをしていますが、特定の項目についてお知りになりたいときには、単語で検索をしていただいた方が、興味ある情報を見つけやすいかもしれません。

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