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with BACCHUS - トランプのピラミッド

トランプのピラミッド

カテゴリ : 
第1期 » 部活動運営 » 顧問からメッセージ » 3年生の引退
執筆 : 
KAZU 2006-7-10 12:40
 今年もまた、3年生が引退するときが来た。最後の芝居の幕が下りたときも、その日のミーティングが終わって帰るときも、すぐにやってきたテストの時期も、それが終わって再開された1,2年生だけの稽古時ですら、見ないように気づかないように感じないようにしていたことに、今日は向き合わなければならない。つらいなと思う。

 当たり前のことだけど、人はそれぞれ異なった存在で、誰かの場所を別の誰かが完全に埋めることなど決してできない。すごく単純な「ノコギリでベニヤを切る」くらいのことだったら別かもしれないけれど(ホントは別じゃないね。ご存じのとおり)、芝居作りは、誰がやっても同じようにできるような、単純なパーツだけが組み合わされてできているわけではないし、そもそも、人と人とが関わると言うこと自体が、それぞれの人間をかけがえのない何かと感じることから始まるのだと思う。僕らの目の前にいるのは、大量生産される部品のひとつではないのだ。
 そうであるからこそ、あらためて3年生の引退を考えると、心の中に大きな喪失感を感じざるを得ない。芝居作りをしていく中で、その感性で、その能力で、そのエネルギーで、その誠実さで、常に心強い動きをしてくれたからでもある。小さいけれどみんなが大切にしてきたこの演劇部という集団において、彼らが常に自分自身としてのベストを尽くし、先輩として暖かく厳しく後輩に接してくれたかけがえのない部員であるからでもある。しかしなによりも、3年生が何か壊れやすい大切なものを共有してきた仲間であり、僕やすべての部員にとって、家族と同じかそれ以上に、自分の日常、それも自分が輝いている時間と結びついている人たちだからだと思う。

 人を信じるとか、人を好きになるとか言うのは、口で言うほど簡単ではない。まるでトランプのカードを慎重に組み立てて大きなピラミッドを造るように、微妙に慎重に組み立てていかなければならないものだ。気まぐれな風の一吹きで、無神経な人の動きひとつで、たやすく崩れてしまうものだ。僕らは確かにいくつもの劇を上演してきたし、誇りを持って「芝居を作ってきた」と言うことができるけど、おそらく本当に作ってきたものは、そのようなはかない何かなのだ思う。僕らはそういうピラミッドを組み立てる手であり、同時にピラミッドを構成するかけがえのないたった一枚しかないカードなのである。

 3年生が引退するというのは、いわばそのピラミッドの一番下の方から、何枚かのカードを無理やり引き抜くことのように僕には感じてしまう。本当は、そんな乱暴なことではないのだと理屈ではわかっているのだけど、やっぱりそう感じてしまう。そして残された1,2年生が、バラバラのカードにように見えてしまう。もちろん、バラバラのカードなんかでは全然なくて、以前ほど大きくも立派でもないかもしれないし、安定性に欠けるかもしれないけれど、頑張って形を保っている小さなピラミッドだってわかっているんだけどね。頭ではわかっていながら、以前のピラミッドを求め、巣立っていくカードを取り戻したい強い気持ちがわいてくる。そのくらい、強い喪失感がある。なによりも、「もっともっと頑張って、次はもっといいものにしようぜ」と、3年生に語りかけられないのがつらいのである。はっきり言って感傷だ。

 ひとつだけはっきりしていることは、もしどれだけ大きな喪失感が心の中にあったとしても、それを乗り越えるの手段は、前に進むことだけなのだと言うことだ。現役の部員たちと、引退した3年生とでは、「前」は別のものであるはず。いや3年生一人一人が、自分だけの「前」に向かって進んでいかなければならない。そのことをきちんと受け止め、振り返ることなく進んでいく力こそが、この演劇部員としての日々の中で身につけることができた、最高のものでなければならないのだと思う。たとえ同じ「前」に向かって歩くわけではないとしても、歩いていく足取りの確かさをお互いに信じ、その足音に励まされることができるだけの絆も、おそらく部活を通して手に入れたものであるだろう。大切な宝物なのだ。

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with BACCHUS とは

高校演劇部の顧問として、部員に向けて書いた「演劇部便り」です。演劇づくりに関するマニュアル的なものから組織作りのようなこと、個人的な想いを書いたものまで内容はさまざまです。一応ジャンル分けをしていますが、特定の項目についてお知りになりたいときには、単語で検索をしていただいた方が、興味ある情報を見つけやすいかもしれません。

2期に分かれています。第1期は2002年9月から2009年3月まで。少しでも高いところに登ろうと必死で自らを鍛えていた演劇部でした。「with BACCHUS」の内容もわりあいハードで、量もとても多いです。第2期は2013年から書き始め現在進行形です。動き始めたばかりの演劇部、演劇初心者がほとんどの部員たちにわかりやすいように書いているつもりです。

質問や感想などのコメントをお待ちしています。

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