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with BACCHUS - 照明担当の出発点

照明担当の出発点

カテゴリ : 
第1期 » 芝居作りのノウハウ » 照明効果について
執筆 : 
KAZU 2004-7-30 13:10
 新しい台本を前にして、各スタッフごとにやることはいろいろだと思うのだが、僕が照明担当になった時、最初にやることはなんだろうかと考える。

 舞台照明の一番大事なことはなんだろう。すごく当たり前のことだけど、ホールを使った近代の演劇では、照明がなければ舞台は真っ暗で、舞台で何をやったとしても観客の目に触れることはない。だから、照明が第一に考えることは、舞台の上にあるさまざまなものや、舞台の上で展開されるさまざまな出来事を、観客に見えるようにすることである。見えるようにする、と言うのは同時に、みせたくないものを観客に見えないようにするということでもある。

 たとえば、暗転が典型的だし、単サスや単シーリングやスポットライトを使って、舞台の限られた部分だけに光を当て、その他の部分をみせないようにするのも同じ考え方の表れだ。だから、一番最初にやるべきことは、観客に、何をどのタイミングでみせたいのかをハッキリさせることである。これはたぶん、まずは台本に暗転と明転のきっかけを書き込むことから始まるだろうし、それらは稽古が進行して行くにつれて、時間という面でも細かく指定されていくし、明かりが変化するスピードなども検討を加えられていくだろう。
 また、舞台の一部だけをみせる照明も、舞台の上のどの部分を、どのタイミングでみせるのかを台本に書き込んでいくことになるだろう。それらの作業が、前号に書いた「読み合わせ」の段階で、全メンバーとも情報を共有する形で行われていくのが基本だと思う。その、「見える、見えない」が、役者の演技や装置を考える前提になるわけだし、まったく何も見えない時間があるとすれば、そこをどう埋めていくかというのが、たとえば音響の仕事になったりもするからだ。

 「何を、いつみせるか」が明確になって、次に「いかにみせるか」に移る。すごくおおざっぱなのだけど、僕は照明を「基調」と、「アクセント」に分けて考えることが多い。「基調」というのは、おおむね地明かりのことなのだけど(単シーリングであれば、それ自体の色や当てる方向なども含まれていく)、すごく明るいのか、ぼんやり見えるのか、色は々なのか、どのような影を出していきたいのか、全体が均等なのか、陰影があるのか、その他たくさんあるけど、まあそんなことだ。それは、ひとつには台本の指示(ハッキリ書いていないにしても)で決まってくる。台本に「夕暮れ時」と書いてあれば、まあ夕暮れ時に見えるような基調を考えるのが普通だろう。

 もうひとつ大事なのは演出(必ずしも演出家、ということだけではない)の要求だ。「かろうじて見えるぎりぎりの明るさの中でやりたい」なんて要求があれば、それを考えていくのが第一だろう。実はこの「基調」が一番大事なのであって、これだけでも完璧にできればすごいことだと思う。どうしても、照明機構にかんする知識が必要になる。でも、しばらくは知識の話はおいておこう。必要があれば、多くの参考書があるからね。


 照明を考える上で、まず「基調」を作るのが大切なんだという話を書いた。じゃあ、どうやって作ればいいのかってことなんだけど、「1サスは#Wで80パーセント、ブッチを#72にして、前明かりは役者の顔が見える程度に#Wをシーリングで入れ、上手FSからアンバーで照らして、ホリは…」などとすぐにアイデアが浮かんでくるならそれはそれでいいのかもしれないけど、別にそうでなくてもかまわない。逆にある程度アイデアが浮かんできたとしても、一度ぐっと我慢した方がいい。

 そういったテクニカルなことに入っていく前に、その前の段階に必要だった、「見える、見えない」も含めて、観客席から舞台がどんなふうに見えてほしいのか、きちんとイメージすることが大切なのだと思う。更に言えば、頭の中にあるイメージはどんなに鮮明でも他人の目には見えないものだから、装置や衣装の担当者と一緒になって、観客の目に映ってほしい舞台の姿を、絵に描いてみることをお勧めする。できれば、色鉛筆や水彩絵の具と言った、ぼかしを表現できるもので書くのがいいと思う。自分のイメージが明確にあって、しかもそれを大切にする(悪く言えばこだわる)演出担当なら、自分なりの絵を描いてみせてくれるかもしれない。どんなに下手な絵でも、そういったイメージを形にし他人の目にも見えるようにする作業が大事なのだと思う。自分のイメージを確認するためにも、他のスタッフと連携をとるためにも、演出担当と話し合いを進めるためにも、実際にその光の中で生きる役者のためにも。

 で、そうやってできあがったイメージを現実のものにするために、初めてたくさんの照明の知識が必要になってくるのだ。基本的に、昼間の明かりはどのように作るのが基本なのか、夕焼けはどうやって表現するのか、ある程度のマニュアルはある。それはきちんと押さえておきたい。だが、ホールによって照明の設備は違うし、時にはほとんど設備がないような所でやらなければいけないこともあるだろう。設備が整っていても、それを操る自分たちの技術がついていかないことだってあると思うのだ。もちろん、必死で勉強し、努力をするにしても、最後に頼りになるのは、自分のイメージ、自分たちが共有しているイメージなのだと思う。

 絵を描くのだって同じで、心の中にある美しい空のイメージを表現するために、目の前にある美しい女性の肢体を表現するために、さまざまな工夫を凝らすはずだ。思うように動かない指や充分とは言えないかもしれない具材を使って、それでも努力をするのは、心の中や目の前にある何かに、近づきたいと思うからである。

 今は、照明の基調の話を書いたけど、実はいろんなことに同じことが言えるのかもしれない。芝居を作ること全体が、もしかしたら僕らの心の中にあるひとつのイメージを現実化していく作業に他ならないのだから。


 基調となる明かりがあって、初めてアクセントを考える余地が出てくる。アクセントというはやや言葉が悪いかもしれない。基調となる明かりの他に、あるイメージを舞台上にあらわすために使う、特別な照明のことだ。トリッキーな技と言っていい(ずいぶん一般的になっているものもあるけど)。わかりやすいのは、ストロボフラッシュや、目つぶしや、極端なSSの使用や、エフェクトマシンなどだろうか。舞台を真っ赤に染めてしまうのだって、基調と言えば基調だけど、むしろアクセントに近いような気がする。

 好きか嫌いかと言われれば、わりあい好きである。特に自分が照明の担当をしていると、こういうことをやることで強い印象を観客に与えることの成功すると、思わずガッツポーズを決めたくなる。なんというか、照明自体が一人の役者として舞台の上で暴れ回ったような気持ちになるのである。いわゆる「裏方」が、「表方」になったような気がする。その一方で、芝居全体を考えた時に、そのような照明の使い方は最小限にしたいなと思うことも多い。少なくとも、そういった効果がなければ成立しないような舞台は、できるだけ作りたくないなって考えることの方が多い。これは、単に自分の演劇観の表れであるのだろう。だが、実際にいろんな場所で芝居を上演しようって思うとき、虹のエフェクトマシンがないから上演できない、なんて思うのは、何かしら「敗北」のような気がするのである。

 しかし、ここぞって言う時にこういった技が決まるとすごく気持ちが良くて、それは僕らの持っているイメージが現実的なものばかりではなく、またどうしても僕らが刺激を求めてしまう傾向にあるからだろう。そして演劇というのが、まずはみてくれる人たちに(広い意味で)楽しんでもらわなければいけないって考えると、トリッキーだろうがなんだろうが、できることは全部やるぞって気持ちになる。

 それでも、頼りすぎなくないなって感じる。基調の所だけでも充分勝負できる、その基調の部分が劇場の機構に合わせて、なんとでも工夫ができる、その上で更に、って思いたい。にもかかわらず、ひとつの舞台を成立させるために絶対に必要になるアクセントもあると思う。そういうポイントはきちんと見つけて、最大限挑戦してみたいものだ。

 ただし、安易に考えないこと。エフェクトマシンが典型的だけど、機材があってそれをつかいさえすれば、誰でも同じような表現ができる。一度しか見たことがない人なら「素晴らしい」って思ってくれるかもしれないが、「ああ、あれね」って思ってかえってしらけてしまう人がいる可能性だってあるのだ。でも、それが芝居の内容と確実に結びついていれば、照明ではなく、照明を含んだ芝居そのものが、観客に感動を与えることができるのだと思う。やりたいのは照明展覧会ではなく、芝居である。それを忘れてはならない。

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高校演劇部の顧問として、部員に向けて書いた「演劇部便り」です。演劇づくりに関するマニュアル的なものから組織作りのようなこと、個人的な想いを書いたものまで内容はさまざまです。一応ジャンル分けをしていますが、特定の項目についてお知りになりたいときには、単語で検索をしていただいた方が、興味ある情報を見つけやすいかもしれません。

2期に分かれています。第1期は2002年9月から2009年3月まで。少しでも高いところに登ろうと必死で自らを鍛えていた演劇部でした。「with BACCHUS」の内容もわりあいハードで、量もとても多いです。第2期は2013年から書き始め現在進行形です。動き始めたばかりの演劇部、演劇初心者がほとんどの部員たちにわかりやすいように書いているつもりです。

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